
最近、Windows 11の「24H2」アップデートについて、あまりよくない声を目にすることが増えてきました。実際、検索エンジンのキーワード候補にも「不具合」「不安定」「重い」といった言葉が並びます。
確かに、ネット上ではアップデート後にトラブルを経験したユーザーの投稿が目立ちます。しかし私は、この24H2アップデートを積極的に勧めたい立場です。その理由と背景を、専門的な視点も交えながらお伝えします。
なぜ24H2は「不人気」と言われているのか?
Windows 11 バージョン 24H2が不人気とされる背景には、以下のような不具合報告が関係しています。
- 指紋センサーの認識不良
- 壁紙カスタマイズアプリ(サードパーティ製)の動作不具合
- 更新プログラムがインストールできないエラー
- 一部PCでのパフォーマンス低下
- Wi-Fiやインターネット接続の不安定化
- 特定アプリケーションの強制終了
- オーディオデバイスやUSB機器など、周辺デバイスの認識異常
- 一部セキュリティ脆弱性の報告(アップデート適用後の再検証待ち)
これらは、すべてのユーザーに共通するものではなく、特定のハードウェア構成やドライバー構成との組み合わせによって発生していると考えられます。
さらに、X(旧Twitter)や掲示板では「やらなきゃよかった」といった感情的な投稿が広がりやすく、印象として”不人気“という評価が先行してしまっているのです。
でも、そもそもWindowsの大型更新ってそういうものでしょう?
Windowsは年に一度の機能更新(Feature Update)を提供しています。これはかつてのService Packに相当するものであり、 大規模なシステム書き換えが行われるため、不具合が発生するのはある意味“想定内”とも言えます。
実際、過去のバージョン(例:21H2, 22H2)でも、特定環境においては同様のトラブルが報告されていました。 しかしそれらは、時間とともに累積更新プログラムやドライバーアップデートによって徐々に解消されています。
つまり、ごく一部の環境で起きた問題がネット上で増幅され、全体が不安定な印象を持たれているという現象が、今回の24H2にも当てはまっているのです。
私が24H2を勧める理由
私は、以下のような観点から24H2へのアップグレードを勧めています。
■ Windows 10のサポート終了が迫っている
2025年10月14日にWindows 10のサポートが完全終了します。セキュリティパッチが提供されなくなるため、継続利用は非常にリスクが高くなります。
■ セキュリティ強化の内容が大きい
24H2では、Kernel-mode Hardware-enforced Stack ProtectionやVBS(Virtualization-based Security)などの機能が標準で強化されています。 これは、ゼロデイ攻撃やドライバー経由の脆弱性に対して非常に有効です。
■ 実用的な新機能が多い
設定アプリの再設計、Copilotの強化、バッテリー寿命の改善など、日常的な使用感の向上が図られています。特にモバイルノートを使う方にとっては体感的なメリットが大きいはずです。
Windows 11 バージョン 24H2 の新機能(ハイライト)
- Copilot+ PC 向け:ペイントのコクリエーター、ライブキャプション、Windows Studio効果、自動スーパー解像度、イメージリスタイルなど
- ネットワーク周り:Wi-Fi 7サポート、LEオーディオ対応、Wi-Fi共有用QRコード、Wi-Fiプライバシー制御
- UI・UX:タスクバーとシステムトレイの改善、エクスプローラーの合理化、スマート電源管理
- アカウント・通知:Teamsとの統合強化、音声Clarityの拡張
- その他:Sudo for Windows(コマンドライン拡張)、リモートデスクトップの改善
これらの機能強化により、単なるバージョン番号の更新ではなく、使い勝手とセキュリティの両面において実質的な進化が見られます。
トラブルが不安な人へのアドバイス
アップデートに不安がある場合、以下の準備と対応でトラブルを最小限に抑えることが可能です。
- 事前バックアップの実施(システムイメージ+ファイル)
- ドライバーの最新化確認(公式サイトやWindows Updateカタログを利用)
- アップグレード後すぐに使わず、数日観察する冷却期間を設ける
また、アップデートを延期できる環境であれば、数週間様子を見てから適用するという選択肢も有効です。
結びに
アップデートに関する不安や不具合の声があるのは事実です。ですが、それらは「リスクを抑える準備が不足していた」ことが要因であるケースも少なくありません。
便利になる新機能、安全性の強化、そして今後のサポート環境を考えると、「24H2は見送るべき」という判断は短期的な印象に流されたものとも言えるでしょう。
10年以上Windowsと向き合ってきた私は、今後を見据えて、適切に備えた上での24H2アップグレードをおすすめします。
補足:用語解説
- VBS(Virtualization-based Security):仮想化技術を利用してOSの一部を分離・保護するセキュリティ機能。
- Kernel-mode Hardware-enforced Stack Protection:カーネル領域でのスタック破壊を防ぐための最新保護機能。
- Feature Update:Windowsの年次大型アップデート。新機能やUI刷新、セキュリティ強化を含む。
- 累積更新プログラム(LCU):小規模な不具合修正やセキュリティパッチをまとめて提供する形式。
コメント