
企業や組織では、標準的なウイルス対策だけでは対応しきれない、より高度で巧妙なサイバー攻撃が増えています。Windows 11では、こうした脅威に対抗するために「Windows Defender Advanced Threat Protection Service(WDATP)」というセキュリティサービスが搭載されています。
このサービスは主に法人環境で利用され、エンドポイントに対する攻撃の検出・分析・対応までを一貫して支援します。個人ユーザー向けではありませんが、動作状況や設定方法を把握しておくことは、トラブル対応やセキュリティポリシー策定に役立ちます。
サービスの基本情報
- サービス名:Windows Defender Advanced Threat Protection Service
- 内部サービス名:
Sense
- 実行ファイル:
SenseIR.exe
(場所:C:\Program Files\Windows Defender Advanced Threat Protection\
) - スタートアップの種類:手動
サービスの概要
このサービスは、Windows Defender ATP(現Microsoft Defender for Endpoint)の中核機能であり、以下のような役割を担います。
- 高度な脅威インテリジェンスの受信
- 攻撃パターンのリアルタイム分析
- エンドポイントデバイスからのセキュリティテレメトリ収集
- 自動応答機能との連携による攻撃の封じ込め
個人向けのDefenderとは異なり、組織単位での脅威可視化と対応を強く意識した機能が特徴です。
主な用途と機能
- エンドポイント上での不審な動作の検知(振る舞い検知)
- リアルタイム攻撃パターンの追跡・可視化
- Microsoft Security Centerとの連携
- 管理者によるセキュリティイベントの集中管理
- 自動調査・封じ込め機能(EDR)
サービスの設定方法
GUIから確認する手順

Win + R
→services.msc
を入力してサービス一覧を開く- 「Windows Defender Advanced Threat Protection Service」を探してダブルクリック
- スタートアップの種類を「手動」または「無効」などに切り替え可能(要管理者権限)
有効化や無効化の手順
有効化する場合
管理対象のデバイスでこの機能を利用するには、管理コンソールやグループポリシーでサービスを有効化します。コマンド操作例は以下の通りです。
sc config Sense start= demand
net start Sense
無効化する場合
個人用途でこのサービスが不要な場合、以下のように停止可能です。ただし組織管理下では無効化できないことがあります。
net stop Sense
sc config Sense start= disabled
推奨設定とその理由
- 企業・組織ネットワークでは「手動」または「自動」起動が推奨
- 個人利用・非ドメイン環境では無効でも問題なし
このサービスはMicrosoft Defender for Endpointと連携して初めて効果を発揮するため、導入していない環境ではリソース節約のため無効化も許容されます。
よくあるトラブルと対処法
トラブル事例
- Windowsの起動が遅くなる
- 高いCPU使用率(特にSenseIR.exe)
- Microsoft Defender for Endpointへの接続失敗
- イベントビューアーに大量のSense関連ログが出力される
解決手順
- サービス状態の確認
sc query Sense
- ログの確認
eventvwr.msc
→ アプリケーションログ → 「Sense」「Windows Defender」関連を確認
- 一時的にサービスを停止して様子を見る
net stop Sense
- グループポリシーの確認
企業環境では GPO によって強制的に有効化されている場合があります。
関連サービスや補足情報
サービス名 | 機能補足 |
---|---|
Microsoft Defender Antivirus (WinDefend ) | 標準のウイルス対策エンジン |
Security Center (wscsvc ) | セキュリティ通知の統合表示 |
Diagnostic Policy Service (DPS ) | 問題発見と自動修復ロジックの一部 |
Remote Procedure Call (RPC) | 基本的なサービス間通信 |
バッチファイル例
@echo off
sc config Sense start= demand
net start Sense
pause
FAQセクション
Q1:Windows Defender ATPとMicrosoft Defender for Endpointは同じですか?
はい。現在は「Microsoft Defender for Endpoint」が正式名称ですが、サービス名や内部構造では以前の「ATP(Advanced Threat Protection)」という名称が使われています。
Q2:このサービスはWindows 11 Homeでも動作しますか?
サービス自体は存在しますが、Microsoft Defender for Endpointの契約がなければ実質的に機能しません。Homeエディションでは使用されないため、停止しても問題ありません。
関連リンク
- Microsoft Defender for Endpointの概要(公式)
- Windows 11でのサービス管理方法(scコマンド解説)
- Defenderサービスの起動順を確認するバッチスクリプト例
- イベントビューアーで脅威ログを確認する方法
まとめ
Windows Defender Advanced Threat Protection Serviceは、法人向けのセキュリティ強化を目的とした高度な検出・対応サービスです。個人環境では動作していない場合もありますが、サービスの仕組みや挙動を理解しておくことで、セキュリティトラブルへの対応や企業ネットワーク管理に役立ちます。
使用しない場合は無効化も可能ですが、運用ポリシーに応じた判断が必要です。

最後までお読みいただきありがとうございます。
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