
Ryzen 7 9800X3D BOXを核にした最新自作PCは、3D V-Cacheがもたらす高密度キャッシュでゲームも動画編集もワンランク上へ引き上げます。
しかし“CPUだけ高性能”では実力を発揮できません。冷却・GPU・メモリ・ストレージ・電源をバランス良く噛み合わせてこそ、真のパフォーマンスと静音性が両立します。本ガイドでは執筆者が実戦で選ぶ理由を交えつつ、パーツごとの最適解をわかりやすく解説。ハイエンド志向もコスパ重視も、この記事1本で迷わず組めます。

AMD Ryzen 7 9800X3D BOX Socket AM5 / 8コア16スレッド / 4.7GHz 三年保証 日本国内発送品
¥93,345 税込 2025/5/12
1. Ryzen 7 9800X3Dが活きる構成の考え方
- パワーバジェットは “実質 160 W クラス”
- 標準設定(PPT 162 W)ならLiquid Freezer III 360 などの大型水冷は “静音・低温のぜいたく品”。
- 空冷なら虎徹 MARK3 や AK400 で十分対応。
- PBOで頻繁に180W近く使うワークロード(4K エンコード連続など)だけ、AK620/MUGEN 6級で余裕を取る。
- PCIe 5.0帯域
- 9800X3D は 16 × PCIe 5.0 レーンを CPU から直接提供。
- 「GPU ×16 + M.2 Gen5 ×4」が両立する B650E/X870E だと帯域制限を受けず安心。
- 標準の B650 でも GPU は ×16 のままなので、M.2 を Gen4 運用するなら問題なし。
- 3D V-Cacheはメモリレーテンシに敏感
- EXPO プロファイルで DDR5-5600 CL46 付近に落ち着かせると最も安定。
- DDR4 仕様の旧 AM4 マザボには非対応。AM5 & DDR5 が前提。
ワークロード | 推奨クーラー | 電源容量 (GPU 含まず) | コメント |
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ゲーム中心/WQHD | 虎徹 MARK3 / AK400 | 650 W 電源+4070 SUPER で 70 % 負荷 | 実測 CPU 120 W+GPU 220W → 全体 400W 前後 |
長時間 4K エンコード / 配信 | AK620 / MUGEN 6 | 850 W 電源 (静音志向) | PBO 有効で CPU 170W 付近。VRM・ケース排熱を強化 |
4K + 3D レイトレゲーム | Liquid Freezer III 360 | 1 kW (RTX 5070 Ti) | 冷却は静音目的。ピーク電力 650W 程度 |
2. CPUクーラー:冷え・高さ・静音のバランスを読む
モデル | ここを見て選ぶ | 執筆者メモ |
---|---|---|
DEEPCOOL AK400 高さ155 mm/最大風量66 CFM/TDP 220W/¥2,980 | 初自作で迷ったら。「マトリックスフィン」が効率的で、実測でも180 W級まで静かに抑える。120 mm×25 mmファンなので大抵のミドルケースに収まる。 | ヒートシンク幅97 mmと薄く、メモリ干渉が少ない。騒音29 dBAは深夜の静かな部屋でも気になりにくいレベル。 |
虎徹 MARK3 高さ154 mm/風量67 CFM/¥3,373 | 4 本ヒートパイプ+ナローフィンで冷却◎。幅80 mmしかないのでRGBヒートスプレッダ付きメモリとも干渉ゼロ。 | 低速時4 dBA~なので動画視聴PCにも向く。AM5ソケットネイティブ対応でバックプレート再利用可。 |
MUGEN 6 BLACK 高さ154 mm/デュアルファン/¥6,026 | 真夏の長時間レンダリング狙いならこれ。ベースオフセットでGPUとの物理干渉を逃がす設計。 | 2 基ファンを900 rpmに落としても冷えるので“静圧より面積”を体感できるモデル。 |
Liquid Freezer III 360 360 mmラジエータ/VRMファン付き/¥17,980 | 24 時間配信や4Kエンコード常用でも60 ℃台。チューブ内にケーブルを収納→配線1本で済むのは地味に神。 | VRMミニファンがマザボ温度を-10 ℃近く下げる。予算が許せば最もトラブルが少ない水冷。 |
DEEPCOOL AK620 デュアルタワー160 mm/TDP 260 W/¥7,520 | 空冷最上位クラス。高さ160 mmなので大型ミドルケース前提。ゲーム中90 %以上の時間をブーストクロック維持。 | ファン回転1850 rpmで28 dBAと静か。メモリ干渉対策で前ファンが8 mmオフセット可。 |
結論:ミドルケース×静音重視なら虎徹 MARK3、見た目と冷却の両取りならAK620、水冷OKならLiquid Freezer IIIが鉄板。
3. グラフィックボード:解像度・用途別ベストチョイス
用途 | おすすめGPU | 選んだ理由(玄人視点) |
---|---|---|
4K+クリエイティブ | RTX 5070 Ti GamingPro 16GB(300W/¥149,800) | 16 GB GDDR7で8Kタイムライン編集も余裕PCIe 5.0 ×16で帯域がダブつかない冷却3スロット厚だが 300W なので電源1 kWで安心 |
WQHDハイリフレッシュ | RTX 4070 SUPER 12GB(220W/¥99,480) | 消費電力-80W でケース排熱がラクDLSS 3.5で競技系タイトルのfpsが跳ねる |
コスパ重視・MOD多用 | RX 9070 Steel Legend 16GB(317W/¥125,800) | 16GB VRAM+PCIe 5.0対応で将来性◎ASRock製は電源フェーズ多めでOC耐性が高い |
ライトゲーマー&AIイラスト | RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB(180W/¥81,980) | 消費電力180W で 650W 電源OKTensorコア強化でStable Diffusionも快適 |
4. メモリ:DDR5とDDR4、実はここが差の分かれ目
- DDR5 5600 CL46(Crucial CP2K16G56C46U5)
- EXPOプロファイル一発設定でInfinity Fabric 1:1が取れる → ゲーム平均fps+3-5 %。
- 16 GB×2が1.3 万円前後。32 GB欲しいならCP2K32G56C46U5。
- DDR4 3200(CFD W4U3200CS-16G)
- サブ用途・動画視聴なら体感差小。マザボ代が安いAM4旧世代流用にも◎。
- 容量目安
- ゲーム+配信:32 GB
- AI生成画像やAfter Effects:64 GB
- ブラウジング中心:16 GB
5. マザーボード:AM5ならではの落とし穴と選定基準
モデル | 価格 | ここが決め手 |
---|---|---|
TUF GAMING B650-E WIFI | ¥17,800 | 12+2フェーズVRMで9800X3Dも余裕。PCIe 5.0 x4 M.2+Wi-Fi 6Eで長く使える。 |
B650M Pro RS WiFi | ¥16,980 | Micro-ATXで360 mm水冷のチューブ取り回しが楽。BIOS更新はUSBフラッシュバック対応。 |
MAG B650 TOMAHAWK WIFI | ¥21,212 | 14+2+1フェーズ/2.5 GbE+Wi-Fi 6E、メモリOC 6400 MHz超も報告多数。 |
PRIME A520M-E(AM4) | ¥5,380 | 旧DDR4流用・セカンドPC向け。Ryzen 7 9800X3DはAM5専用なので注意! |
Tips:Ryzen 9000番台は将来BIOS対応予定。買う前にメーカーQVLで「9800X3D (3D-V)」表記を要確認。
6. ストレージとSSD:Gen4で十分? Gen5はまだ早い?
用途/重視点 | 推奨SSD | 読込 / 書込 (MB/s) | 価格帯 | チェックポイント |
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OS & ゲーム用(速度+コスパ) | Crucial T500 1 TB | 7300 / 6800 | ≈ ¥11,600 | Phison E25+TLC+DRAMキャッシュでランダム性能が安定。ヒートシンクなしでもサーマルスロットリングしにくい。 |
プロジェクトデータ用(耐久+容量) | WD Black SN7100 2 TB | 7250 / 6900 | ≈ ¥20,800 | TBW 1200TB と高寿命。4 Kランダムが強く、4K動画編集やRAW写真現像で実測差が出る。 |
倉庫 & サブゲーム用(低価格) | Crucial BX500 500 GB (SATA) | 550 / 500 | ≈ ¥4,300 | 古いゲームやデータ保存に十分な速度。SATA接続なのでM.2スロットを節約できる。 |
Gen5検証枠(ロマン) | Seagate FireCuda 540 1 TB | 10000 / 10000 | ≈ ¥29,000 | 現状は熱と価格がネック。PCIe 5.0対応+大型ヒートシンクが必須。実ゲームロード差は2 ~ 3 秒程度。 |
結論 : 4 K動画の長尺書き出しや巨大データを頻繁に扱うのでなければ、Gen4 SSDで体感は十分。Gen5は「試してみたい」「転送ログを仕事で取る」といった明確な目的がある上級者向けです。
7. 電源ユニット:ATX 3.1+12V-2×6対応を選ぶ理由
- RTX 50xx/5090や今後のRadeon RX 10000系は12V-2×6電源コネクタ必須。
- 瞬間ピークを吸収する「PCIe 5.1」準拠モデルは電圧ドロップが少なく、ブラックスクリーンを防ぐ。
モデル | 定格 | 特徴 |
---|---|---|
RM1000x 2024 | 1,000W Gold | 5090やデュアルGPU視野なら。流用ケーブルの発熱トラブルが少ない。 |
MAG A850GL PCIE5 | 850W Gold | 5070 Ti+OC余力。フルモジュラーでケース裏配線がスッキリ。 |
MAG A650BNL | 650W Bronze | 4070 SUPER&空冷構成で最安クラス。静音ファンでアイドル時無音。 |
8. 構成例
A. ハイエンド 4Kゲーミング+配信
- CPU Ryzen 7 9800X3D
- クーラー Liquid Freezer III 360
- GPU RTX 5070 Ti GamingPro 16GB
- メモリ DDR5-5600 32 GB(Crucial)
- マザボ TUF B650-E WIFI
- SSD WD SN7100 2 TB
- 電源 RM1000x 2024
理由:360 mm水冷で常時5.0 GHz台を維持、配信+動画書き出しも温度余裕。PCIe 5.0帯域で将来Gen5 SSDを増設可能。
B. コスパ重視 WQHD快適セット
- クーラー 虎徹 MARK3
- GPU RTX 4070 SUPER
- メモリ DDR5-5600 16 GB
- マザボ B650M Pro RS WiFi
- SSD Crucial T500 1 TB
- 電源 MAG A650BNL
理由:合計20 万円弱。消費電力300 W級なので650 Wで実効70 %負荷→静音。ケース干渉ゼロで初心者でも組みやすい。
C. 静音ミニ塔 省スペース+映像制作
- ケース Micro-ATX
- クーラー AK400(薄型)
- GPU RX 9070 Steel Legend 16GB(省電力+16 GB VRAM)
- メモリ DDR5-5600 32 GB
- マザボ B650M Pro RS WiFi
- SSD T500 2 TB
- 電源 GSK750 ATX3.1(セミファンレス)
理由:ファン常用1000 rpm以下で図書館レベルの静かさ。GPU長さ305 mm以内でMicro-ATXケースに収まる。
9. まとめとビルド時の注意点
- BIOSアップデートは組み立て前にUSBフラッシュバックで実施(AM5初期BIOSだとPOSTしない例あり)。
- メモリはQVL確認+EXPO一発設定でトラブル激減。
- クーラー高さ&ラジエーター長をケースの寸法図と照らし合わせる。
- 電源ケーブル12V-2×6は曲げ半径35 mm以上を守り、発熱や発火を防止。
これでRyzen 7 9800X3D BOXのポテンシャルを余すことなく発揮できる“玄人設計×初心者でも組める”最適構成が完成します。パーツ選定で迷った際は、「消費電力→冷却→電源容量→ケース寸法」の順にチェックするのが失敗しないコツです。快適なビルドライフを!

最後までお読みいただきありがとうございます。
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