
Excelの最新機能である動的配列(スピル)機能は、従来の連番生成や重複排除の方法と比べ、非常にシンプルかつ柔軟なデータ処理を実現します。従来の方法では、複数の手順や設定が必要だった作業も、スピル機能を使えばたった1つの数式で自動的に複数のセルに結果が展開され、業務効率を大幅に向上させることができます。
Youtubeで「SEQUENCE関数」を使ったスピル機能を紹介しています。
従来の手法との比較
これまで、Excelで連番を生成する場合、オートフィルを使ったり、マクロを組んだりする必要がありました。また、重複排除に関しては、ピボットテーブルや複数の関数を組み合わせた手法が主流でした。しかし、これらはデータが更新されるたびに範囲の調整が必要で、設定が複雑になる傾向がありました。
一方、スピル機能は単一の数式入力で全体をカバーでき、データの増減に応じて自動でセル範囲が更新されます。たとえば、最新データが追加されるたびに結果がリアルタイムで反映されるため、毎回手動で修正する手間が省けるのです。
スピル機能のメリット
Excelの動的配列機能は、以下の3つの大きなメリットがあります。
- 自動更新
データが増減しても、1つの数式が自動的に新しいセル範囲に対応します。これにより、オートフィルやマクロを使って都度更新する手間がなくなり、常に最新の情報が表示されます。 - シンプルな数式管理
複雑な配列数式を1つにまとめることで、数式自体の見通しが良くなり、修正や再利用が容易になります。従来、複数の関数や設定を組み合わせて行っていた処理が、一元管理できる点は大きな利点です。 - 柔軟なデータ操作
動的に変化するデータに対して、計算結果が自動で反映されるため、リアルタイムな分析やレポート作成が可能です。従来の方法では、データの追加や変更に応じて手動で範囲を調整する必要がありましたが、スピル機能はその必要がありません。
実際の活用シーン
具体的なシーンで考えると、例えば「日々更新される売上データの集計」や「複数の操作(並べ替え、フィルタリング、重複除去)を一括処理するケース」では、スピル機能が非常に有効です。最新データが入力されると自動で集計結果が更新されるため、定期的な手動調整が不要になり、業務全体の効率化が期待できます。
1. 自動更新
従来の自動更新
従来は、売上データが追加されるたびに、以下のような作業が必要でした。
- 手動範囲の調整
- 例えば、売上データの範囲を指定して計算していた場合、新たなデータ行が追加されると数式の参照範囲を更新する必要がありました。
- オートフィルの利用
- オートフィルを利用して連続データのコピーや計算をしていましたが、手動で範囲を広げる作業が必要でした。
スピルの自動更新

動的配列機能を利用すれば、1つの数式が自動的に全データをカバーします。
- 例
- 売上データ全体を対象にした集計用数式を入力すると、新たにデータが追加された場合でも、スピル機能により自動で最新の範囲に対応。
- たとえば、
=SORT(FILTER(売上データ, 売上データ[日付]>=TODAY()-2))
のような数式で、直近1週間のデータを自動抽出できるため、範囲更新の必要がありません。
ポイント: スピル機能はデータの増減に合わせて自動更新されるため、毎回手動で数式を修正する手間が大幅に軽減されます。
2. 重複除去
従来の重複除去
これまでの方法では、重複データを取り除くために以下の方法が用いられていました。
- ピボットテーブルや「重複の削除」機能
- データ範囲を指定し、ツールバーの「重複の削除」機能で一度に処理。ただし、元のデータが更新された場合、再度処理する必要があります。
- 複数の関数を組み合わせた手法
- 複雑な配列数式や条件付き書式を利用して重複を排除する場合もあり、設定が煩雑でした。
スピルの重複除去

Excelの動的配列機能では、UNIQUE関数を使うことで、簡単に重複を除去できます。
- 例
- 売上データの「商品名」列から重複を排除する場合、
=UNIQUE(売上データ[商品名])
と入力するだけで、商品名のユニークなリストが自動的にスピルされ、データ更新にも対応します。
- 売上データの「商品名」列から重複を排除する場合、
ポイント: 新たな商品が追加されても、自動的にリストに反映されるため、毎回手動で重複処理を行う必要がなく、管理が楽になります。
3. リアルタイム集計
従来のリアルタイム集計
従来の方法では、集計を行う際に下記のような課題がありました。
- 固定範囲の参照
- SUMIFやAVERAGE関数などで固定の範囲を指定していたため、データが増えると範囲を再設定する必要がありました。
- 手動更新
- データが追加されるたびに集計結果が変わらない場合は、数式の再設定やマクロでの対応が求められていました。
スピルのリアルタイム集計

動的配列機能と連動する集計関数を使えば、データの追加や変更に合わせたリアルタイムな集計が可能です。
- 例
- 売上合計を算出する際、全データが自動更新される範囲を対象にすることで、
=SUM(売上データ[売上])
のようなシンプルな数式が、最新データに対応して自動で再計算されます。 - さらに、FILTER関数と組み合わせることで、例えば特定地域のみの売上合計も容易に算出可能です。
=SUM(FILTER(売上データ[売上], 売上データ[地域]="東京"))
- 売上合計を算出する際、全データが自動更新される範囲を対象にすることで、
ポイント: リアルタイムでデータが反映されるため、集計結果を常に最新の状態で維持でき、分析作業の効率が格段にアップします。
サンプルデータ:日々の売上データ
下記のデータは、各比較項目で説明するためのサンプルです。
(実際にはExcelシートに以下の表が入力されている状態を想定してください。)
日付 | 商品名 | 売上 | 地域 |
---|---|---|---|
2025-02-20 | 商品A | 1000 | 東京 |
2025-02-20 | 商品B | 1500 | 大阪 |
2025-02-20 | 商品A | 2000 | 名古屋 |
2025-02-21 | 商品C | 1200 | 東京 |
2025-02-21 | 商品B | 1800 | 大阪 |
2025-02-21 | 商品D | 2200 | 福岡 |
2025-02-22 | 商品A | 1300 | 名古屋 |
2025-02-22 | 商品C | 1600 | 東京 |
2025-02-22 | 商品B | 1900 | 大阪 |
2025-02-22 | 商品D | 2100 | 福岡 |
このデータを基に、前述の各手法を実際に試してみると、スピル機能の自動更新、重複除去、そしてリアルタイム集計のメリットがより実感できるでしょう。
まとめ
Excelの動的配列(スピル)機能は、既存の手法と比較して以下の点で優れています。
- 自動更新: データ変更時の手動修正が不要
- シンプルな数式管理: 複雑な処理を1つの数式に集約
- 柔軟なデータ操作: リアルタイムでのデータ反映が可能
このように、スピル機能を上手に活用することで、従来の面倒な作業を大幅に効率化できるため、Excelでの業務効率が格段に向上します。今後、データの量や形式が変化しても柔軟に対応できるスピル機能の活用は、まさに「自動化」と「簡潔な管理」を実現する最適なソリューションと言えるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございます。
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